「笑わないでよ」


ターミーが膨れた。猫の目のように、ころころ表情が変わる。


(可愛い・・・)


「だって君、ずっと独身で通すなんて言いながら、カズがロクな男を連れてこないなんて言い方するからさ。やっぱり年頃の子の興味の対象は一緒だ」


僕もさっきの仕返しにからかうように言った。


「あら、私、そんな事いつ言ったかしら?」


「独身こと?男のこと?」


僕は斜めに彼女を見ていた。


「りょーほーっ!」


(あ、また怒った)


「昨日と今日だよ。後のほうはつい今しがたのことだ。酔ってても記憶力には自信があるぞ」


僕は勝ち誇った口調で言った。


「嘘よ、私独身でいるなんて言ってないもん!!」


舌をペロっと出した。なんて可愛いんだ。でも僕は負けなかった。


「言ったさ。僕はこの二つの耳でしっかりと聞いたぞ」


「英語を取り違えて解釈したに決まってるんだから」


「なんの!僕は英語だけは自信があるぞ。君は僕と会話していて分からないのかな?」


(おい、少し意地悪だぞ)


「意地悪!私は独りでいるなんて言ってないもん!」


(やっぱり怒った)


離れようとするターミーの腕を、僕は引き寄せた。