静かな、保健室。
もぅすぐ、消えてしまう蝉の声が
いくつも聞こえた。
僕は、ベットに飛び込んだ。
保健室のベットは睡魔が必ず、
襲ってくる。
「はぁ......」
結衣、君しか。
見えなかったのに。
君しか、興味なかった。
「利久くぅ~ん」
甘い声が、僕の耳に届いた。
「こんなトコで。サボり?」
そこには、同じクラスの
板野真由がいた。
「アタシもサボりなんだぁ」
「......。」
「利久くんって、顔はいいのに、
無口なんだねぇ」
能天気に僕に話しかけてくる。
「...結衣のこと?」
「.....何で」
「やっぱりぃ。好きなんでしょ?
結衣のこと」
「....。」
「結衣が東京に行ったのは、
許嫁だよ」
その時、僕は心臓が止まるかと
思った。
「許嫁?」
「うん。結衣っちは、昔から
そうなってるの。決まった年になったら、
いいトコの坊っちゃんと」