それから、何日かがすぎ
もうすぐで夏休みという所だった。
クラスの大半は、夏休みの話だった。
「なぁ!利久っ」
いつものように俊一が駆け寄って
来た。
「夏休みどうすんのさ」
「どうするって」
「結衣ちゃん!」
別に、どうもしなかった。
ただ自分が少し結衣に気を
引いているのはわかっていた。
「まったく、お前は駄目だなぁ」
「うるせぇ」
「利久く~ん」
そこへ、仄かに香るシトラスの
香りがした。
「何話してるの?」
「え?」
「夏休みの話だよ」
俊一が言った。
「夏休みかぁ~!私、夏休みに
なったら、東京に行くんだ」
その言葉に一瞬、
戸惑った。
「東京?」
「うん。そういえば、利久くんの
生まれたトコだよね」
「あぁ」
でも、なぜ。結衣が?
「何で東京に行くの?」
俊一が聞いた。
「う―ん....。ちょっとね」
結衣は戸惑っていた。