(告ったあの日、きょーちゃんに何も言わせなかったのは私の方で、…それで納得してたはずなのに。)


「俺、隆志みたいに手をつないだり、頭撫でてやったりって、そうゆうの…出来なくて…」

「え…いつの話?」

「ガキん時だよ!…ずっと前から…俺、」

その言葉に、
胸いっぱいお腹いっぱいの私は、

“もう、これ以上入りません”というつもりで、

恭一の唇を、
自分の唇でふさいだ。


3秒くらいだったと思うけど、
ゆっくりと離れた唇が、もう少し長かったようにも感じさせた。


「もう…分かったから。」

そう言って向きを変え、歩き出した私の足は、

しだいに駆け足へと変わり、家へとたどり着いた。


そして、自分で自分の行動に、驚くばかりか…

自己嫌悪にすら陥った。


「恋ってやつは恐いやね〜」

次の日、報告した鈴ちゃんは、ニヤニヤしながら言った。

「鈴ちゃん達は、どんな感じなの?」

「私達?んー、部活の後、皆で一緒に帰ったり、電話でいろいろ話したり。」

「そんなもの?」

「だって、ほとんど毎日一緒に居られてるから」

「だって、部活のあいだでしょ?」

「うん。でもさ、引退試合が終わったら、なかなか会えなくなっちゃうこと考えたらさぁ」

「そっか、3年だもんね」