力で適わぬのならと、
なぜか、言葉でやっつけてやりたくなり、

「そんなに私が好き?」


無言な恭一の態度に、

(何言ってんだあたし!つい、昔みたいに、喰ってかかったりして…)

でも、

「すっげ〜ムカつく!…ぐらい好きなんだけど。」

「へ…」


口でも負けた気がした私は、
体の力がガクッと抜け、
うつむいた状態のまま、恭一の胸元に、
グーで軽くパンチを入れた。


「イッテ〜!」

「ウソだぁ!あたしなんか、さっきからずっと、心臓が痛くてしょうがないんだから」

「え、病気?」

「も〜!」

突き飛ばすつもりの、私の両手を押さえ
自分の方へ引き付けた恭一に、
バランスをくずし、もたれかかった
次の瞬間、

私は、恭一の腕の中に居た。

「え?」

「…」

「きょーちゃん?!」


力を抜いて、そっと私から手を離した恭一は、

「ありがとうな。…今、陸上、マジ楽しいや!」と、

照れくさそうに言った。

「うん。知ってる。」

「やっぱり?」

「…あたしの方こそ、ごめんなさい。」

「なんで?」

「きょーちゃんの気持ち…気付けなくって。」

「ホントだよ。」