そして、その日
私の身に事件がおきた。

それは、部活を終えた帰り道、
ここから独りになる角を前に、
チームメイトへ、手を振った時のことだった。

「よう!」

「きょーちゃん!どうしたの?」

「立ち読みの帰り」

「?本屋、向うだよ。」

「ちょうど終わる頃だと思ってさ。」

「さすが、元・バスケ部」

「るせー。今日、隆志、休みだからって思ったけど、そんなに暗くなかったな」

「(アレレ、胸がキューンとなったぞ!)もう、夏だからね。」

前にも経験した、あの胸の痛みとおなじだった。

「しかし、怖がりキャラって柄じゃねーよな。」

そう言いながら、歩き出す恭一に、

「自分こそ、迎えに来るようなキャラじゃないじゃん!」と

追いかけて、顔を覗き込んだ。

すると、恭一の顔が、赤くなっているのに気付き、
慌てて、次の言葉を探した。

「もしかして、隆志に頼まれた?」

「…なんで?」

「え?」

「何で隆志が頼むの?」

「何でって、隆志はそういうキャラだから。」

恭一の表情が変わったのには気づいていたが、
あえて私は、流れを変えず、続けた。

「そうだよな、アイツ優しいもんな〜昔っからそうだった。おまえのおばさんにも気に入られてたし。」

(え?)

「あん時だって、お前のこと、少し突き放そうとか言っておいて、自分は話かけてさ…ウマイんだよ!」