同じクラスで、分かっているはずなのに、
あえて、鈴ちゃんとの件は話さずに
こうやって、そばに居てくれるところは、
昔の隆志のままだ。


靴に履き替え、校庭を渡っていると、

「隆志〜!」

三階の教室の窓から
恭一の姿が見えた。

「おお!」

「帰んの〜?」

「うん!」

「じゃあ、俺も〜」

そう言った途端
カバンを投げた落とした恭一は、
自分の身も投げ出した。


「ばか〜!」

隆志は慌てて駆け寄ったが、
私は、足がすくんで、動けずにいた。


教室からは、クラスメートが覗き込み、

「北村〜、ジッとしてろ〜」

担任は、慌てて降りてくるようだ。


近くに居た生徒も、恭一を取り囲み、

「大丈夫だよ、このくらい。」と

立ってみせる恭一に、
皆、騒然としていた。


「大丈夫なのか?」

真っ青な顔をして、先生は尋ねる。

「はい。ちょっと、クルブシが痛かったくらいです。」

「ったく。いったい、何があったんだ?」

「帰ろうと思って…」

「馬鹿者!階段を使え!飛び降りる奴があるか!」

「はい!ここに!先生の話が長いから、友達が帰って行くのが見えたので」

見ていた生徒は、笑っていた。