幼い頃、同じ男に生まれて、恭一は俺の手本だった。

「恭一みたくなりたい」

いつもそう思い、そばに居て真似をしていた。

恭一が、みっこを好きだと知れば、
俺もみっこを好きになった。

気が付けば、恭一はみっこに夢中になっていて、
俺は初めて、真似できないと思った。

みっこに嫉妬する自分が居たからだ。

でも、みっこもまだ、恭一の気持ちに追い付いてなかった。

それも時間の問題だと思った俺は、
二人を思いやるフリをして、
なんとかふたりを遠ざけた。

なんて偽善者だ。

もちろん、罪悪感でいっぱいだった。

そしていつしか、
恭一に思いを寄せるようになった、みっこの気持ちに
共感を持てた俺は、
みっこに恭一を任せることにした。

俺にとっても、みっこの存在は大きかった。


恭一以外の男は考えられないのに、
もう、その恭一は居ない。

そこまでは、二人一緒だったのに、

みっこは、寺岡慶太という、次のステップへ進もうとしていた。

俺は、独りになるのが怖かった。

そして、やっとのことでみっこと…

その日を境に、俺の中のみっこの存在が変わっていくのが分かった。

みっこのことが、愛しく思える様になっていた。

みっこには幸せになってほしい…俺が幸せにできるのか?


自信の無い俺は、
恭一の面影と重なる寺岡に、みっこを託すことを決心した。