慶太の手を払って、タクシーに乗り込んだが、
慶太も入って来そうな勢いだった。


「警察呼びましょうか?」
運転手の一言で、ドアが閉まり、車は動きだした。


とりあえず駅を目指してもらい、携帯で隆志に電話をかけた。


駅前のロータリーに入り込むと、
ガードレールに腰掛ける隆志の姿が見えてきた。


傍まで付けてもらって、タクシーを降りた私は、
たちまち溢れだす涙を、抑えることができなかった。


隆志は、そんな私の頭を撫でながら、
しゃくり上げる私を自分の胸元に引き寄せた。


「大火傷する前で良かったよ。」

そこには、
安心している自分がいた。


「隆志…」

「ん?」

「このままじゃ…帰りたくない…」

「みっこ?」

「なんかもう…忘れたいよ…」

「…いいよ。」


隆志は、乗ってきた自転車にまたがり、スタンドを上げると、
親指で荷台を指差した。


その荷台へ横に腰掛け、
自分発信の大胆な言葉に照れながら、
隆志の背中に顔を埋める私。


そして、二人が乗った自転車は、
ちょっと距離のあるホテル目指し、走り出した。