「その度キスするの?」

「あいつ酔ってて、」

「向こうからしてきたって?」

「そうだよ、俺は、」

「やっぱり、きょーちゃんになんか似てない!」

「はあ?」

「きょーちゃんは、すれ違いざまにキスされる様な男じゃなかったもん。」

「なんだよそれ!いいか、奴を想うのは目をつぶるよ…でも比べんなよ!たまんねーよ!ったくムカつくな…」

「ムシャクシャしてたから他の女と?」

「だから、」

「その気があるから、油断するって、隆志が言ってたよ。」

「…なんで今、あいつが出てくんだよ!」

「あたしと隆志は切っても切れない仲だから!」

「当て付けのつもりか?」

「本当のことを言っただけ。誰かさんみたいに、隠れてコソコソとするのは」

パシ―ンッ!


慶太の掌が、私の左頬をかすった。

「ごめん!」

「…本当は隆志が怖いんでしょ。この前、あんな強気だったけど、隆志には適わないって思ってるんだ。」

「あんなの、ハッタリにきまってんだろ。」

「…な〜んだ!すっかり騙されるところだった!」


ちょうどそこにタクシーの灯りが見え、
私は手をあげ、タクシーを止めた。


「ちょっと待てって。」

「離して!」

「ちゃんと話そうぜ、」

「暴力ふるう人と話したってしょうがないし!」