たぶん、避けられているに違いない。

独りの時は気になってしまうが、
慶太と居る時は、
すっかり、忘れることができる自分がいる。


そしてとうとう、
サーフィンを見に、海へ来るよう、誘われた。


私が了解すると、子供のようにはしゃいで…
そんな慶太を見ると、こっちまで嬉しくなった。


海のそばに住んでいても、
サーフィンをしている人達を、
景色として見いた私が、

サーファーの群れの中で
誰かの姿を追う日が来るなんて、思いもよらなかった。


皆、知り合いみたいな感じだったが、
慶太本人からは、3人に紹介された。

そのうちの二人は、カップルで、
彼女の方が、気を使って、度々、話かけてくれる。

「ただ観てるのって寒いでしょ〜。」

「大丈夫です。いっぱい着込んできましたから!」

「そう?やってるとそうでもないけど、あがるとキツイの!着替えてくるね。」


母が聴く曲に、
今の私の状態のフレーズがあるのを思い出すと、
一人、ほくそ笑んでしまう。

「なんか、嬉しそうだね!ケイにほっとかれてるのに、楽しそぉ。」

「え〜。」

戻ってくるなり、からかってくる彼女に、私は否定しなかった。

そして、慶太に視線を戻し、
前に言われた言葉を思い出す。


『増やして行こうぜ!新しい思い出。…俺と出会った時、その扉は開いたのさ!』

(信じてみよう!)