「…凄いね。あたしはそんなに大人じゃない…」

「あはは、わかってるよ、そんなこと。」

「なんでよ!付き合ってもないのに。」

「じゃあ、つきあってみようよ…俺達。」

「…」

何も言わない私の唇に、
慶太は再び唇を重ねてきた。

私はそれを受けとめ、
返事として返したのだった。



「おいコラ。不良娘!」

学校帰りの駅で、ばったり会った、隆志が言った。

「なんなの〜?いきなり。」

「この間、何してたんだよ?おばさんが心配して電話してきたぞ。未知子がまだ帰ってないって。」

「あ〜、ごめん!友達に誘われてね、ちょっとね。」

「ちょっと?合コン?」

「ん〜、そんな感じ…」

「へー。どうゆう…」

たじろぐ私に気付き、隆志は、

「どした?行かないの?」

と、不思議そうに聞いた。

「あのね、友達と待ち合わせしててね…」

「友達?」

「うん。」

「…あ、そう!じゃあな。」


隆志が帰って行ってから、
2本目に入ってきた電車の、ドア付近に、慶太の姿を見つけた。

ドアが開くと同時に、
電車に乗り込むよう、合図をする慶太は、
慌てて飛び乗った私の、勢いあまった体を、受け止めた。

そのわりに、扉はゆっくりと閉まり、ふたりは思わず吹き出した。