休みが明け、
学校に向かう私の予想では、

今日の話題の中心人物は
恭一だと、
疑いもしていなかった。


「恩田さ〜ん!!」


下駄箱を過ぎた辺りで、
隣のクラスの女の子が、
騒がしく近づいてきた。


「?何?」

「妹から聞いたんだけどさ、5年の木村くんが、恩田さんのことが好きなんだってね!」

「え?(木村?…あ〜、あの男の子の…エ〜!)」

「そうなんだってよ!
あの息の合ったリレーは、
今じゃ“愛のバトンタッチ”って呼ばれてるんだって〜」


まさかの展開だった。


「木村くんてね、結構モテるらしいんだけど、アレを見せつけられちゃったら、皆、諦めるしかないだろうってさ〜!」


彼女は、学年一の情報屋だ。

真実も嘘も、ペラペラと喋りまくるので、
皆、面白がって、彼女のことをとり囲む。

それが彼女の魂胆にも思えるが、

今回は自分のことだけに、
アルことナイこと言いフラされては困るので、

私も、確かな情報を
詳しく知っておきたかった。


「恩田さんが走ってる時、皆、超ヒヤかしてたじゃん!…知らなかった?」

(そうだったのかぁ。アレは声援じゃなかったんだぁ。)


恭一が彼を、
“ぶっ倒す”と言ったのも、

リレーの間のヤジを聞いて、
私が馬鹿にされたと思ったからに違いない。