「お母さん。」

「ん?」

「今度、あたしのケータイ持ってきて。」

「病院では使用禁止よ」

「わかってる!きょーちゃんの写メが見たいの。メールのやりとりも…」

「…」

「隆志にも会いたいな。」


恭一の事故を受け入れられないのは、
そこに至までの経緯を知らないからだ。


病院側に、

『今の状態で、彼の話をするのはまだ早い』と

そう言われている母は、
それを逆効果と思い始めていた。


次の日の夕方、

ベッドから外の景色を眺めていると、
母の差し金で、隆志が姿を現わした。


黙って、ベッド横の椅子に座る隆志は、一言。

「何やってんの、お前」

と、険しい顔をしてみせた。

「こんなんなっちゃったよ…」

こんな情けない姿を、恥ずかし気もなく、
唯一見せれる隆志の顔も、
少しヤツレているのがわかった。


「ちゃんと食わないと…」

「喉を通ってくれないんだもん。…隆志はどう?」

「俺?…大丈夫!」

「…そうなんだ…」

すると、

「みっこ、ごめん!俺が原チャかしたから…」

突然、かしこまる隆志。

「…どうして、そんなことになったの?」

私は、冷静に聞き返した。