うちのアンカーも速いけど、
やっぱり恭一は速い!


もともと、たいした差はなかったが、
あっという間に、ふたり並んで競り合っていた。


そしてゴール間近、

体、一人分は前に出て、
恭一がゴールテープを切った。


その歓声ときたら、
それはもの凄かった。


私も、凄く感激して、

ほんの少し、悔しかった。


走り終え、列に戻ってくる恭一を、
私は満面の笑みで迎えた。

が、

私の手前で立ち止まった恭一は、

「おまえさー!」と

5年生の彼に声をかけた。


「…木村です。」

「ぶっ倒すぞテメー!」

そばに居た私は、

「ちょっと、何?どうしたの?」

慌てて、あいだに入っていった。


その時の私は、
何も分かっていなかった。