「意識が戻って安心なされたでしょ?良かったですね。」

「ありがとうございます。」

「お母さん、大丈夫ですか?もう、3日ですもんね…」


(どう云うこと?きょーちゃんの事故は、昨日のことじゃ?…今日は何日?)

私は、潜った布団の中で、浦島太郎状態になっていた。


結局その日は、そのまま夜を迎えた。


母も、看病の疲れがたまっていたのだろう…

ソファーに横になって眠っており、
私が起きあがっても、全く気がつかなかった。


おかげで病室を抜け出せた私は、
点滴を引いて、足元をフラつかせながら、
公衆電話を探した。

そして、なんとか辿り着き、
受話器を耳にあてた時、はじめて気が付いた。

(お金がないや!)


携帯電話に慣れた私は、
いつでも何処でも、誰とでも、連絡がとれる習慣がついており、

しかも、今の状態の思考回路では、勘違いしても、仕方がないだろう。


お腹は空かないが、身体には堪えているらしく、

力も尽き、気が抜けた途端にめまいがして、しゃがみ込んでしまった。

ちょうど、そこに通りかかった、
別室の患者の、付き添いの方の気転によって、
母の待つ病室に、戻ることができた。


母は、眠ってしまった自分を反省するかのように、
終始、謝りっぱなしだった。


点滴も、新しいものと交換され、
面倒をかけていることは自覚していた。