「あたしからも送ったし!もう、なんで電話こないのかな?」

「未知子。」

「こっちから電話してみよっか、」

「美智子!…居ないの!…もう、居ないのよ〜未知子!」


腕にしがみ付き、
今にも泣きだしそうな母は、

無表情で尋ねる私の言葉

「じゃあ、どこに居んの?」に、

一度、深く呼吸を整えると、

一番良い言葉を探しながら、答えはじめるのだが…

「病院にね…でも、それはもう……身体だけで…」


「…いや〜!!」

私は母親を突き放し、
無我夢中で外へと飛び出した。

その時!

ちょうど走ってきた乗用車と衝突し、
私の体は、ボンネットに乗り上げた。

車の、急ブレーキをかける音と母の悲鳴が、
意識の中で遠退いていく。


目が覚めると、そこは病院のベッドの上だった。

(そうだ、あたし車に…)

そして、自分のずぶとさに、笑いと涙が同時に出た。

(記憶喪失にでも、なってればよかったのに)

不謹慎にも、本気でそう思ったのだった。


ドアの開く音がすると、
なぜか私は、また目をつぶり、寝たフリをした。

入ってきたのは母だ。


まだ、目覚めたことを知らない母は、
荷物を置くと、
私の頭や頬を優しく撫でたあと、
カーテンを少しだけめくり、しばらく外を眺めていた。