怪我も完治して、練習に戻った恭一は、
1ではなく、0からのスタートだった。


皆と同じ練習メニューでは、まだ足への負担が大きく、

別メニューを組んでもらって、地道にこなしていた。

ただでさえ、遅れをとっているのに、

焦る気持ちを抑え、コーチ陣に応える恭一にとって、
今が正念場なのだ。


怪我していた間に、たくさん会えていた分、

また、元に戻ったら、
会えない日がもどかしく思え…

私も部活を始めることにした。


やるからには、きちんと参加しなければ気が済まない私は、

突然の、恭一からの誘いも、渋々断ることが多々あって、

さらに会える時間を狭めてしまい、

最近では、夜の散歩だけが、ふたりでの貴重な時間となった。


「なんでまた、バスケ始めたの?」

「16歳らしい、健康な身体になろうと思って。」

「今でも充分、魅力的だから大丈夫だって。」

「馬鹿じゃないの!そう言うことじゃなくて、」

「冗談だって。」

「…ごめんね。あんまり会えなくなっちゃって…」

「ホントだよ…」

「お嬢様思考だから、週に3回しかないんだけど、タイミングがね〜。」

「…お前が、お嬢様扱いされる日が来るとは、考えたことなかったよなぁ。」

「たまに、あたしは浮いてるんじゃないかなって思う時があるよ」