そして突然、
校舎を眺めながら、恭一は語りはじめた。


「学校が別々になることなんか、おまえが、中学受験するって時から覚悟してたよ。こんなに近くに住んでるんだからって、隆志には笑われたけど。」


その話に、居た堪れなくなった私は、
恭一の、上着の裾をつかんでいた。


「どんだけ前から好きだと思ってんだよ。年季が違うんだっつーの。」

そう言って、上着を掴む私の、その手元に

「ん!」と、

差し出してくれた恭一の手を、
パチンと叩き、

「恥ずかしからイイ。」

と、笑ってみせる私。

「えー!今、手をつなぐとこだったのでは?」

「どこが!全然だよ。(あたしって、ホント可愛くない…)」

「次、どこいこっか?」

「じゃあ、きょーちゃんの学校。」

「勘弁しろよ〜。」

「じゃあ、水族館!」

「それがいい。」

「ね!決まり、行こ行こ。」


水族館は、ほどよく混みあっていて…少し薄暗いのも手伝い、

さっきの恭一の勇気を讃え、
そっと、私から手をつないでみせた。


すると恭一も、自然にその手をにぎり返し、

館内中、ずっとそのまま、
ゆっくりと閲覧してまわった。


イルカのショーを待ちながら、
少し、落ち着かない私。

「なんか、デートしてるって感じだよね。」