「あたしをね、陸上部に薦めた人が居てね」

「隆志?」

「!知ってたの?」

「今、知った。…そんなこと思いつくヤツ、アイツしかいねーじゃん。」

「そっか。」

「で、考え込んでるってワケだ。隆志のこと思って」

「そうじゃなくて!」

「…」

「感謝してるの!すごく良い思い出ができたから…浸ってたの。」

「ふ〜ん。」

「だって…あとは…受験だもんね。」

「!」

「考えたことある?」

「…おまえは?」

「あのさぁ…忘れた?あたしが中学受験に挑戦してたこと。」

「あ、…そっか…」

「ほらねぇ、暗くなるでしょ?」

「なる。」


盛り上がったあとの片付けは、
しんみりとして、まさに

“嵐の去った静けさ”だった。


そして、数日が経ったある日…


志望高校の記入用紙が配られると、
一瞬にして教室が騒めき、
私も友達と顔を合わせ、
ため息まじりの声をあげた。


早い者達は、
去年から、いくつかの高校の文化祭に出向いて、

自分達の通う、
公立の中学での文化祭と比べては、
明らかに違う、規模の大きさに魅了されて、
早くも、高校生活に期待しつつ、

第三志望まで、スラスラと書きはじめていた。