そして、男子決勝戦。

選手がそれぞれ、自分のポジションへと向かう時、

一段と力の込められた、応援団の声と、歓声が
競技場にこだました。

準備が整うと、
全生徒が立ち上がり、

緊迫した空気が立ちこめる中、

ピストルの音と共に、

皆一斉にスタートした。


3コースを走る、1走者のスタートは完璧だった。

2走者には2位でバトンは渡った。

だが、周りもかなり、強力なメンバーを揃えて来ている。

3走者のスタートは、4番目となってしまった。

でも、それ以上の差を広げること無く頑張り、

とうとう恭一が走り出した。

バトンも、ゾーンをギリギリで無駄なく渡り、

最後の走者は、ビュンビュンと風を切り、

ゴールめがけ走っていく。


「きょーちゃーん!」

私も無我夢中で叫んでいた。

そして、ゴール付近。

私は、決して忘れることなどできないシーンを、
目に焼き付けたのだった。

上半身を反って、胸を前に突き出した恭一は、
身体一人分差の、
3位でゴールを決めたのだ!


「きゃー!」

私はそばに居た後輩と、手を取って喜んだ。

「やったー!メダルだ!すごい!すごーい!」


喜びも束の間、辺りがザワつきはじめた。


見れば、電光掲示板に、
今の順位が表示されないのだ。