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それからいつも通りに過ごして、
先生には先に伝えたけど、
クラスメートにはギリギリに伝えることにした。
やっぱり日が近づくに連れて寂しくなっていく。
「ねぇ、葵衣菜?
凌くんも引っ越しして葵衣菜も引っ越し。
なんか運命じゃない?」
「そういえばそうだね。でも運命の人じゃなかったよ?」
…もうそんな冗談すら言えるようになっていた。
その時、くるみが口を開いた。
「そういえばさ、葵衣菜の引っ越し先ってどこ?」
「……分かんない、ってか聞いてない…」
「はぁーっ?それ真面目に言ってるの?」
「…大真面目です…」
「もう間近なのに…
今日聞いて明日にでもちゃんと教えてよ!」
「了解!」
「ほんとにもうっ…」
あたしとくるみは笑った。
あたし、笑えてる…
それも全部くるみの支えのお陰だよ?
「ただいまーっ!」
今日はお母さんは仕事が休みだから家にいた。
「お帰りなさい!」
「そういえばさ、引っ越し先ってどこなの?
今日くるみに聞かれて思い出したの!」
「あー…えっと…」
「どうしたの?」
「実は…
凌くんの引っ越し先と同じなの…」
「…え?」
「葵衣菜、この前…別れたって言ってたでしょ?
だからなかなか言い出せなくて…
でもほら!
会うことなんて多分ないわよ!
最近忙しくて連絡はとれてないからどうしてるかは分からないけど…」
「そうなんだ…でも、そうだよね!
会うことなんて…ないよね?」
今会うと、せっかく押さえてた気持ちが溢れそうで、
それになによりも会ったときの凌の態度が
恐い…
「葵衣菜…大丈夫?」
「うん!大丈夫だよ!
ごめんね!」
大丈夫…
きっと大丈夫…
引っ越しまであと少し…
もう、すぐそこまで来てるのに…
衝撃過ぎるよ…
次の日くるみに言うと
さすがのくるみも驚いていた。
「それはビックリね…
葵衣菜大丈夫?」
「うん…。多分会わないと思うし…それなら大丈夫!くるみのお陰でここまで立ち直ったし、引っ越しも決心できたの!
だからもう大丈夫!」
「葵衣菜…っ改まって言わないでよ!あたし…泣かないって決めてたのに…もう来週でしょ?」
そう言うくるみの目には涙が溜まってた。
あたしもつられて、2人で隠れて泣いた。
今日の終礼でクラスメートには報告するつもりだ…
皆、どんな反応するんだろうな…
凌とあたし続けてだもんな…
なんか凌の跡を追ってるみたいで不思議だ…。
―――終礼
「えー、今日は皆に報告がある。…浅原。」
あたしは前に出ていって口を開いた。
「来週、引っ越すことになりました。今までありがとう。そして、凌のこととかでいろいろ迷惑かけちゃってごめんなさい。お世話になりました。」
そう言ってあたしは頭をさげた…