俺は覚悟を決めて、とりあえず彼方に声をかけることにした。







「あのさぁ。彼方…」








だが、俺がそう声をかけた瞬間、身体が何かに引き寄せられてぶつかった。








「えっ?」








どうやら彼方に俺の胸の襟元を掴かまれ、思いっきり引き寄せられた反動で彼にぶつかってしまったらしい。








俺は思わず彼方を見上げた。








しかし、表情を読み取る間もなく、俺は今度は勢いよく体を押され、そのまま自分の部屋の中の扉付近の壁にぶつかると、床に崩れ落ちた。








「ちょっと、いきなり何する…」








俺が言いかけた、その瞬間彼方の顔を見て、俺は言葉を飲み込んでしまった。








今まで怒った彼方をたくさん見てきたが、今の彼は無表情で感情がいっさい読み取ることができない。








それが逆に俺の恐怖心をあおった。








それと同時に部屋の扉が小さくバタンと音を立てて閉まった。








すると彼方が静かに口を開いた。








「遥…。今日の僕がとくに機嫌が悪いのはわかるよね?」








「は…はい。」








俺は恐る恐るうなづいた。








たしかに今日の彼方の機嫌の悪さは異常かも…。








俺がそう思っていると、彼方はドンッと俺の顔すれすれの壁を手のひらで叩いた。








「じゃあ、率直に答えろ。あの貧乳に何を聞いた?」








「え?な、何をって…」








彼方に追い詰めるように問われ、俺は動揺を隠すかのように彼方から目をそらす。