何だか、浮かない顔で数学準備室のドアをノックする。


三浦先生:「どうぞ。」

三浦先生の一定の声が中から聞こえ、カチャッと開ける。


三浦先生:「ああ、吉崎。すまないな。ありがとう。」


入って来た私を見て三浦先生がそういう。


三浦先生は机の上で沢山のプリントを整理していた。


「…はい。」


スッと三浦先生に頼まれていたプリントを渡すと、三浦先生はもう一度「ありがとう」と言った。


三浦先生:「どうかしましたか。」


フッと顔を除く三浦先生。


「別に…何でもないです。」


三浦先生:「この間、泣かせてしまったこと怒っているか?」


「へ?…この間って?」


三浦先生:「あれ?違いましたか。」


ああ、あの始業式のこと言ってるのかな?


「あれは、私が勝手に泣いちゃっただけですよ。」


三浦先生:「なら…どうしてそんな浮かない顔をしているんだ?」



…私、そんな顔してんだ。…だって、気になる。今、高木先生が数学をあの子達に教えていることを考えると。



ああ、分かった。これが…


「…ただの、ヤキモチです。」



ボソッと言葉にする私を三浦先生の笑い声が響く。