お父さん:「奇跡だよ。本当に…。冷たく暗い海で、もがく彼を見付けられたことも、たまたま車で寝る時用に毛布を積んでいたことも…。」


「…凄い。」


お父さん:「ああ本当に!必死で意識の薄れた小さな子供を抱え、毛布に包んで車の暖房を最大にして…100キロ以上飛ばして病院に連れて行った。…奈緒、新聞の記事は読んだのかい?」



奇跡…って凄い。まるで運命のように偶然が重なって…


驚く私にお父さんが聞く。


「え…、記事は怖くて読めずに、すぐに帰ったの。」



お父さん:「そうか。…高木君が一命を取り留めた事を開いた時には、マスコミが大騒ぎさ。高木君の両親が"子供を海に捨て自宅で自殺、その子供が実は生きていた!"ってね…。」



「…それ記事の見出し…。」


お父さん:「ああ。警察は高木君の両親関係を全て調べ、それをマスコミは報道。まだ4才になったばかりの彼には、現実は容赦無く襲い掛かった。彼の家もかなり複雑でね。母親の残した日記に全て書いてあったそうだ。子供を愛せない現実と、生きていくことの辛さ、最後のページに、…自殺直前だろう、…子供を殺したことへの罪の重大さを語ったものだ。」