お父さん:「高木君と出会ったのは、私が二十歳の時だった。私がまだ会社設立さえ考えず、ただ何かをしたいと考えていた。…あの別荘の場所なんだが、昔はもちろんのことだが、ログハウスどころか道さえガタガタの土の道。その一部の森を切り開いてあの別荘を建てた。」
新聞の見出しを見た図書館での瞬間を思い出す。ほんの一瞬しか、あの記事を見れなかった。読むのが怖くて。
「…お父さん、…怖い。」
お父さんはそう言う私に続けて話す。
お父さん:「…あの場所は人気もなく私が小さい頃、父が良くその海に連れて行ってくれた場所だった。奈緒のおじいちゃんだな。大好きな場所だった。18歳で車の免許を取って何度も訪れていたよ。…嫌な事があれば訪れて、何度も浜辺の端から端まで歩いたり、走ったりしてな(笑)」
ドクンドクンと心臓が音を立てる。目をつむるとお父さんの過去が私の頭の中で蘇る。
「お父さん、私…知りたくない。…聞きたくない。」
お父さん:「私は話しているだけさ。強制はしないよ。聞くか聞かないかは奈緒の自由。別に知らなくてもいいことだ。」
フッと思い出す、安西先生に見せる高木先生の無邪気な笑顔。