成雪さん:「君に会えて、私は本当に良かったよ。」



「…俺に?」



成雪さん:「じゃなきゃ、会社なんて建ててないさ。君のような子が、世界で今でも苦しんでいるよ。」


「…。」


成雪さん:「すまない…。気を悪くしたかい?」



「あ、いえ!俺には、成雪さんや安西先生…吉崎にも出会えたんで十分ですよ。それに、大学の友達や、何人もの生徒達に。」



成雪さん:「良かった。安西先生がいなくなって高木君がどうなったか心配で心配で…。意外と元気そうで良かったよ!ははは。」


「そんなこと言ったら安西先生が寂しがりますよ(笑)」



成雪さん:「ははは、それもそうだね。…じゃあ、長電話失礼するよ!また、連絡するよ。」


「ええ、また…。」



ピッと電話を切り、履歴に映る成雪さんの文字。


あ、苗字直さないとな。



[吉崎成雪] と登録して携帯を閉じるとシルバーのストラップが目に映る。





「"もう…、卒業してしまうのか。"」





高校卒業の時、安西先生が言った言葉と重ねて、ポツリと呟く。





呑気に寝てんだろうな。



チラリと隣の壁を見る。



吉崎…