それは夏休みが始まるちょっと前のこと…―。






化学準備室で、無表情な三浦先生が少し驚いて私を見る。



三浦先生:「…高木先生の行ってた大学?」



少し、恥ずかしく視線を床に落とした。



「…はい。」






決めたの。高木先生と同じ大学へ行きたい。




別に、教師になりたいわけじゃない。



ただ、先生が勉強してきた場所で、私も勉強してみたいと思ったから。




先生の見てきたものを少しでも見たくて。





三浦先生:「そうですね。公立だから少し厳しいが…。今の吉崎の成績なら行けますね。」



「あ、別にまだ行くって言ったわけじゃ!!」


何だか高木先生と同じ大学を目指すことをばれるのが恥ずかしくて慌てて否定しようとする。



そんな私に、三浦先生がにっと笑って口を開く。


三浦先生:「行きたいんだろう?」



「うッ…。」


核心を突かれたように言葉に詰まる。


三浦先生が笑うと、怖い。



「た、高木先生には私が、三浦先生に聞いたこと、な、内緒にしてくださいね!!?」


焦りながら、三浦先生に言うとまたクスッと笑う。