バッと、声の方向に走ると、あまりにも近くにいた先生の体に思いっきりぶつかる。


高木先生:「わ!吉崎、何でこんな所に…。」


さっきの恐怖から、一気に安堵する心の変化に、思わず涙が溢れ出す。


先生にぶつかったまま、さっきの恐怖で離れたくなくてそのままギュッと先生の服を掴む。


高木先生:「…もう、大丈夫だから。ほら、こっち。」


グンと私の手を大きな手が掴み、引っ張られる。


引っ張られる先に、大きな岩が月の光りに照らされていた。それを慣れたように昇る先生の手を掴み、私も昇る。


広く大きな岩は、左右後ろは木のてっぺんで隠され、細い道のように先に続く。


月明かりでくっきり見える先生に手を引かれながらその先に行くと、その岩が崖であることに気付く。


「海―…。」


崖下にザザン、ザザーンとぶつかる波の音が耳に響き渡る。


高木先生:「どーだ?いい所だろ?」

月の光りのせいなのか、高木先生のいつもの笑顔も何だか、違って見える。


そんな先生に思わず、見とれていることも忘れて返事をした。


「…はい…。」