「俺、は……!」
「そう、か……トウジ、が……」
「……何?」
……俺が?
消え入るような声を必死に聞き分け、トウジは眉を寄せた。
俺が、どうしたっていうんだ。
「襲われた時、ね……あの像の顔が、見えた気がしたんだ……。トウジ、だったんだね」
あの像、とは、きっとイオリが通っている、あの教会に残されたキリストの事だろう。
そして、イオリは自分が誰に助けられたのか、全く覚えていない様子だ。
もしかしたら、誰かに助けられる前に意識を亡くしてしまったのかも知れない。
――俺、は。
「……おう」
とことん最低な男だ。
内心で自分に唾を吐きかけながら、それでもトウジは、愛おしそうにイオリの身体を優しく包み込むのであった。