「っは、そうか。あのじーさん、死んだか。手間が省けたなぁ」

中心人物であるらしい男がニヤリと笑うと、室内が俄かにざわめいた。

宋軍了は、国防を担う大臣である。いや、死んだという話が事実であるならば、『大臣であった』と表現した方が正しいのだろうか。
国防大臣の責務は、諸外国に対する防衛のみならず、国内での闘争などの制圧にも権限を有する。

その大臣が死んだ、というのは、彼らにとって好機以外の何ものでも無いようであった。

「大河(タイガ)さん!やるなら今しかないっすよ!」

「そうですよ、大河さん!ようやく俺らの革命が始まるんすよ!」

皆、歓喜の表情を浮かべながら口々に中心の男、大河を煽りたてる。
が、大河は仕方の無さそうな笑みを浮かべ、それを制した。

「皆、落ち着けって。まだ機は熟してねぇ」

「でも……!」

「……お前らの気持ちは、解る。さんざん陰に追いやられたワ系の俺らが、ようやく堂々と表を闊歩できるかも知れねぇチャンスだってのも、解ってるつもりだ」

静かに、諭すように語りかける大河に、皆は口を閉じて口籠った。

この場に集まっている人間は、皆ワ系であるらしい。
そして昨今、国内で取り沙汰されているワ系の過激派。そのグループが、彼らである。