天地がひっくり返るほどの衝撃を受けたユンアンだったが、ベッドに寝かせた少女の顔を確認して、なるほどなと納得がいったのであるが。

しかし、この場所に連れてるとは。

ポーカーフェイスの彼も、今回ばかりはよほど肝を冷やしたのでないかと想像して、少し笑ってしまったのは秘密だ。

賊がナイフを振りかざしていたと聞いて、致命的な外傷がないかと心配したユンアンだったが、診察して胸をなで下ろした。
頭を軽く打っていたものの、幸い少女の傷は大したことはなく、どうやら精神的なショックで気絶したようだ。

一通り診察を終え、少女に安定剤を注射しながら、ふと賊の事が気になり聞いてみて少しだけ後悔した。

「なぶり殺してやった。ヴェロニカの近くの路地裏に捨ててきたから、朝には『掃除』されてるだろ」

感情無く言うハオレンに、ユンアンはどれ程ひどい殺され方をしたのかと、顔も知らないその賊を小指の爪先程度だが気の毒に思った。

「こういう時に限って龍上会の集まりとはねぇ。あのトウジとかいう男の子、ボディーガードとしては失格だよねぇ」