「君みたいな無免許のヤブに切られてあげようっていうんだから、少しは有り難く思ってよ」
この男、わざと不細工な髪形にしてやろうか。
頬のあたりを軽くひきつらせながら、店主は内心で悪態をついた。
「雲昂(ユンアン)。お前、何しに来た」
タオルとハサミを用意しながら、薄い明りのついた店内にやってきた店主は、まだ若い男だった。
歳の頃なら二十歳そこそこ。
端正な顔立ちをしているが、野性児じみた雰囲気を醸し出しており、短く揃えられたこげ茶の短髪も相まってさながら狼のようだ。
加えて、細身ながらも筋肉の引き締まったその身体は、ただの理髪師とは到底思えないほどに鍛えられているようだった。
「嫌だな。髪をね、切ってもらおうと思って来たんじゃない。ここ、理髪店でしょ?一応」
鏡越しに眼光鋭く見つめられた銀髪の男、ユンアンだったが、まるでそんな目で見られていないかのようににこりと笑いながら言う。
そのユンアンの様子に、店主の若い男は苛立ちを前面に押し出して、ガタン、と乱暴に椅子の背もたれを倒すと、ホットタオルをユンアンの顔に押し当てた。
「いちいち一言多いんだよ!髪切りに来ただけじゃねぇだろ!ニコニコしながら無理やり押しかけてきやがって!」