黒色のプラスチックで出来た、手の平に収まるほどの大きさをした、楕円形の機械。
これが、USBというものだろう。
機械の端にはめ込まれた蓋のような物を取ると、差し込み部分のような金属部品が露わになった。
曖昧な記憶を辿ってみると、父が仕事机でPCに向かっていたとき、こんな形をした小さな機械を、どこかに差し込んで使っていたような気がする。
あたしは再び机へと戻ると、この機械が収まりそうな接続部分を探し出し、少しばかり震える手でそれを差し込んだ。
すると、今まで矢印の形をしたカーソルが砂時計に変わり、画面に現れるRoadingの文字。
見たいような、見たくないような。
そんな気持ちで、あたしは目を瞑ってPCから僅かに顔を背ける。
ポン、という軽い音が聞こえ、あたしは恐る恐る目を開けて、画面に現れているであろう父の真実に向き合おうとしたのだが。
「そんな……」
現れた画面を見て、愕然となった。
そこに映し出されていたのは、警告を表すバツのマークと、『このPCからデータの取り込みは出来ません』という文字だけだった。
あたしの知らない真実が、どんどんその影を大きくしていくような気持ちになった。