店の娼婦が流行り病で死んだので今日の七回忌は出来そうにない、とひたすらに謝られたのだが、あたしはそんなシャオファをすぐに帰してしまった。


シャオファは何も言わなかったが、あたしはきっと彼女が姉のように慕っていた娼婦のリョウが死んだのだと思ったのだ。


何の根拠もない、ただのカン。


だけど、自信はあった。


シャオファがあんなに泣くなんて、とても近しい誰かに何かがあったに違いないから。


シャオファを店に送り届けて自分の店に帰る途中、あたしが死んでもあんなに泣いてくれるのだろうか、なんてバカな事を考えた。



「おお、アンヘリーテ!今日はシャオファと一緒じゃないのかい?」


グラスに口を付けた時、そう言ってあたしの横に腰をおろしたのは、スティーヴだった。


この酒場の近くに住む土木作業員で、何年か前にここで知り合った。

『ら行』をやけに舌を回して発音するのが彼の特徴なのだが、それが妙に小気味良い。

筋肉隆々の体つきに、つるつるに剃り上げた頭は頭皮まで真っ黒に焼けている。

あたしが驚いたのは、この肌の色が土木工事の功績という訳ではなく、生まれつきなのだということだった。