カオルちゃん曰くこれがチャームポイントらしいのだが、それはどう見ても昔悪かったです、という証でしかなかった。
カオルちゃんは、もう随分昔に『外』からこの街に入り込んだらしい。
産まれてこの方、この街から出たことのないあたしは、初めて出会った『外から来た人間』に少しばかりの興味を抱いた。
興味本位に『外』のことを聞いてみた事もあるのだけれど、カオルちゃんは、世の中には知らない方が良い事もあるのよ、と言っただけだった。
その時の、カオルちゃんのどこか悲しそうな顔は、今でも覚えている。
それ以来、あたしはカオルちゃんに『外』の話題を持ちかけたことは一度もない。
「そういえば、紅花で出たらしいわよ、例のアレ」
「うん。知ってる」
「アンタも気を付けなさいよ。性病だって噂もあるんだから」
神妙な面持ちで言うカオルちゃんに、あたしは気の毒そうに笑ってみせた。
シャオファがあたしの店にやってきたのは、仕事を終えた直後のことだった。
泣きはらした重そうな瞼が、彼女の大きな瞳を半分くらいにしてしまっていたので、何かあったのだとすぐに分かった。