売上の60%を支払わなければならないことは痛手だけれど、店の営業は実質、龍上会が行っていると言っても良い条件下での商売だ。

この街で龍上会に逆らおうとする奴はまずいない、それは同時に自分の身の安全もある程度は保証されるということになる。


このロンシャンで、あたしのような何の取り柄もない女が生き抜くためには、結局これくらいの事しかないのだ。

あたしは肩甲骨まで伸びた茶色の髪をポーニーテールに結い上げながら、店の扉を開けた。

カラン、と扉に付けられたベルが鳴る。


店から一続きになっている居住スペースへ抜けると、そこがあたしの’仕事場’だ。
と言っても、さほど広くもない部屋に簡素なベッドが置いてあるだけの無機質な空間。

「七回忌、か」

先ほどシャオファに言われた言葉をふと思い出して、あたしは仕事場からさらに奥へと続く通路をちらと見遣った。


この先は、父の部屋だ。


父が殺されて以来、あたしはこの先へ入った事がない。

故人を偲びながら、というシャオファの言葉が妙に耳に残っていて、あたしは思い立って七年ぶりに最奥へと足を進めた。


「うわ……埃まみれ」

キ、とドアを開けると、部屋は埃だらけで廃墟寸前のような光景になっていた。