ふと啓介が、何かを思い出したように俺を真っすぐ見た。


「そう言えば…月の引力が潮の満ち干に関係してるんだっけ…」


は?


引力…?


「人の体もほとんど水分でできてるんだから、もしかしたら何らかの影響があるのかもなっ」


へ〜…


そんな考えもあるのか。


真剣に相槌を打ったら、啓介も真面目に話しを続けた。


「例えば満潮の時には新しい命が産まれやすくて、干潮の時は死ぬ奴が多いってベタな話しだろ」


確かに…そんな話しも聞いた事ある。


「でも科学的な根拠は何も証明されてない!お前の血が騒いだのも…美沙先輩がおかしくなったのも…満月のせいなんかじゃねぇよ」


あれ?


「なんだよ、結局はそれかよ」




全否定じゃねぇかっ…。




少しでも月のせいにして、




傷を和らげたかったのによ…




ハァ……………


またまたため息が出る。


その時だった。




「あーっ、陸!啓介っ!」


誰かに呼ばれて二人で顔を上げた。


誰だ?!


「弥生先輩………」


目が…点になった。


隣に…


美沙先輩がいる……………!


ビックリした顔で俺を見る美沙先輩。





なんで…こんなとこで会っちまうんだ………


「偶然〜!!久しぶりだねーっ、卒業以来じゃない??うちらも一緒に飲んでいい??」