短刀が刺さったままの脇腹部からは真っ赤な色をした鮮血がどぱどぱと溢れ出す。



涙で遮られた視界ですらはっきりと理解出来るくらいの赤。



女性は一瞬だけ何が起こったか理解出来ていない表情で僕の方を向きそして、すぐにさっきまでの優しそうで暖かい表情に戻った。



女性の輝きの無い瞳はこちらの方向を正確に捉えてはいるものの、海を見ていたときと同じように、その瞳はどこか遠くを見つめていた。



そんな女性の様子を僕はただ漠然と眺めていた。



いや…。



正しく言えば眺めていたというよりは、この女性から目を離すことが出来なかった。



本当に綺麗だ…。



そんな馬鹿なことを心の底から思って。



女性の腹部からは止まることなく、おびただしい量の真っ赤な血液が流れて続けている。



血液が砂浜に落ち砂を固め鈍色に染まっていく。



この状況を見たものならばどんな素人でも、誰もがすぐに理解できるだろう。



この女性の命がもうすぐ尽きるということを…。



女性はとうとう立てなくなり脇腹を押さえながら砂浜に倒れ込んだ。



今倒れながらこの女性は何を想っているのだろうか。