何故このようなことを身体が望んでいるのか分からない。


 
けれどやらなくてはならないのだろう。


 
全てを始まらせるためにも…。


 
全てを終わらせるためにも…。


 
視界が徐々にぼやけていく。


 
僕の目からは…


 
僕なのかも分からないこの身体からは、自然と目から大粒の涙が情けなく零れ落ち、僕の頬を一筋の涙がつたっていく。


 
その一筋の涙に続くかのように次々と涙が零れ、つたい、そして砂浜の上に落ちていった。


 
僕が持っているこの刃物。


 
刃渡りは30センチほどで、握る場所と刃のちょうど中央には大きく紅い、見ているだけで頭の中まで侵食されるのではないかと思うほど美しく、そして不気味に輝き続ける宝石の装飾が施された物だ。


 
あまり詳しくないのだがこの刃物を分類で分けるなら短刀という物なのだろう。


 
この短刀の持つまがまがしい雰囲気、作り…


 
この国で作られた物ではないことは一目瞭然である。


 
僕の右手に力強く握られたこの短刀で隣にいる女性を刺せば命を奪うことくらい容易なことであろう。


 
……だから僕は勢いよく女性の脇腹目掛けてその短刀を突き刺した。