しかし今回は一撃では殺さない…。



おばさんの顔はみるみるうちに青ざめ、恐怖に支配されてすぐさま走って逃げようとした。



まるで今から狩られる獲物のように。



この矢は一般の物より少し特殊で先端に即効性の痺れ薬を塗ってある狩り用の矢である。



狩りは狩りでも悪魔に心を支配されたようなこの女が狙い。



傑作だ。これこそが本当の魔女狩りなんだろう。



……たしか
『魔女は弓矢で麻痺させたあと人をいたぶって殺す』だったよな。



今よりもう少し小さかった頃、父さんが僕とセレスに教えてくれたことが記憶をよぎる。



聞いた時にはあまり理解もせず、ただただ二人で怖がっていたのを覚えている。



今狂気に支配されている僕の中にも悪魔が宿っているなら魔女が魔女を狩るってことになるのかな。



まぁ女じゃないから魔女ではないか…。



こんな時にさえ馬鹿みたいな思考が止まらない僕の頭を呪いたくなる。



まぁ、でも皮肉な話なのは確かだな。



神様はこんな戯曲にもならないような愚かな人生を僕に与えたのかと思うと少し落ち込んでくる。



しかもいつの間にか言葉使いまで変わってるし…。



……これが僕の中の悪魔なのか。

そんなことを考えながらも無意識に、悪魔の前から走って逃げだそうとするこの女の太ももに矢を命中させていた。



この女は真っ赤な血を傷口からドクドクと流しながら地面に倒れ込んだ。