大輝の言葉に零は、動揺した。それもそのはず。
そこにエィナがいるというのに大輝が『誰と?』というもんだから……
「は? だってほら! 穴の奥に俺の言ってた夢の中の女の子が……」
零がもう一度女の子のいた穴の中を指差すと、もう女の子の姿はなかった
洞窟の中は何も変わっていない
「……え? エィナは?」
穴の奥に出口なんてない
この穴の出口はここだけ……
消えるなんてことはまずあり得ない話だと言うこと。
出口は俺の後ろにある。姿そのものを消さない限り洞窟を出ることは不可能なはず――
「げっ! 零まさか幽霊見たんじゃ……零だけに?☆」
「馬鹿いうなよ! マジなんだ!」
「はいはい」
大輝は零の話を全く聞かず、背を向け洞窟の外へ出た。
大輝の呆れた顔が零の話なんて信じていないとすぐにわかる。
相変わらず真剣な話になると聞かない大輝に零は、また一つため息をつく。
「おら! 零! 今日はサボるぜなんかおごれよ」