「潜入なら俺が行くのに…」

「バカなこと言わないでよ。若頭の銀が行ったら大騒動に決まってるでしょ」



6つ年上の兄、銀之助。

実力は組長や側近達もお墨付きをもらっているが、わたしに関しては少し面倒だ。




「ほんまは、すでにあっちにおるもんがしっかりと情報さえ掴めてたら…」

「それはお互い様でしょ」



西から東に潜入している人はもちろんいる。

それはきっと逆も然り、だと思う。


これまで均衡を保てていたのはどちらにも情報漏洩がなかったこと、東西の真ん中がしっかりしていたこと。


真ん中が潰れたのは、東西の影響がすでに許容範囲を超えていたからだろう。


どちらにも中立だった土地が崩れるのだ。

そこにいる中立派、そしてその地域一帯の勢力は西も東も、どちらも欲しいはず。