駆け足で駆け寄ってくる兄、銀之助。


この組の若頭であるのにかかわらず、妹であるわたしのこととなると騒がしい。



「逃げたりしないから、部屋に行くよ。ここじゃできない話なんだから」

「お、おう…」


そう銀を説得させ、自室へと向かう。




侵入者を防ぐためとかなんとかでややこしい赤羽の本邸の造りの離れにひっそりとあるわたしの部屋。



「相変わらず殺風景やなぁ〜」

「そりゃそうでしょ」


この部屋で過ごしたのは、わたしが小学生に上がるまでだ。

一年前この街に戻ってきたけど、それからはマンション住まい。



「で、単刀直入に聞く。なんで親父の仕事を受けた」

「わたしに与えられた仕事だからでしょ」

「アホか!今まで以上に何があるかわからんのやで!」

「それは今までも変わらないし、そのためのわたしなんでしょ」