「誰?」
一人が呟いた。
「今日からこの学校に通うことになりました、阿部コウキです。よろしくお願いします」
テンプレートの内容。
でも顔は少し怖がるそぶり。
もちろん、演技に決まってる。
いくら女子校育ちとは言え、家はあの赤羽だ。
こんなガチのチンピラまがいに恐れおののくことはない。
しかし普通の女子高生は?と考えたら、やっぱり怖がるのだろう。
演技をするのは得意だ。
「み、みなさん、新学期ですし、新しく阿部さんもクラスに加わりますし、仲良くしてください…ね…」
先生の困ったような声。
「…………」
うるさかった教室は、未だに静まり返ってる。
視線はわたしから外れることはなく、むしろ男子の視線はとくに鋭くなってきている。
…なんだ?