父とは真逆、昔からわたしのことを兄並みに心配し、なによりも家族が大好きな母。

母からしてみたらあの組長も、大切な旦那と位置づけられており、組長に勝てるのは母だけだと言われている。



「銀くんから聞いたよ。東へ行ってたんだってね」

「うん」

「建物も人も、こっちとは違ったでしょ」

「うん」


母は昔、東にいたことがあり、わたしは母譲りで関西弁を使わない。



母はわたしが生まれた時から表舞台には出ることなく、ここでひっそりとしていることが多い。

それでも不自由しないように、たまに外出したり、庭には花壇があったり、裁縫などもしている。


母が外へ出ないのは、狙われるから。
それはわたしも、わかっている。


だけどもう一つだけ、理由があるのを知っている。