「やかましいでしょう。獣も苦手とする音なんです。実は今朝方、調理場から勝手に拝借したんですよ。なにしろ大蛇が相手ですし」
言ってから、アレキサンドラは心の内に思う。
できるだけ敵を弱らせ、追いつめてからすぱっときれいに退治してしまうのが得策。
煙でいぶす、という手もあるにはあるが炭などの備蓄がない。
その辺の松の葉でも集めるしかない。
「っあー! さすがに難聴になりそうです。休憩なさいませんか?」
疑問符を投げかけて、己の要求とわがままに申し訳を添える。
町人の親切で持たせてくれた水筒の煎じ茶を飲んで心を落ち着けて、少しだけゆっくり息をつく。
「王子、疑うわけではないのですが、本当に大蛇がこの山にいるのですか」