彼女は王子のあまりの無邪気さに、彼が子犬のように見えてしまった。彼を抱きすくめてしまいたくなってしまう。

 愛らしく自由奔放。

 まるで、アレキサンドラが昔飼っていたマルという犬にそっくりだ。

 懐かしいばかりの思い出が彼女の胸に去来する。

 しかし、これでは王子として頭が痛いのも現実だ。

 サフィール王子は男児としてはやや軽佻浮薄というか、無駄におもしろおかし過ぎる。

 あれでは腹にいちもつある者にとっては格好の餌食だ。

 なんとかならないものだろうか……

 と、また彼女が考え込んでいると、翌日、庭から入ってきた王子が朝一番で腹から声を出した。