彼女は冗談めかして一旦、考え直すことにした。
この王子と、自分が深山に赴き、どんな成果を成せるだろう。
山積みの書類は? 部屋の片付けは? どうにもならない。
王子は立ち上がると、長目のチュニックの後ろを払った。
「言っておく。泉のそばには蕩蛇(とうだ)の剣という長剣が突き刺さっていて、大蛇を倒せるのはその剣だけだと教えられた」
しばらくマジメに聞いていたアレキサンドラだったが、彼女はそういった幻のような話は信じられなかった。
サフィールの言うことなのだから信じようとはした。
が、そもそもなんだって大蛇が倒されねばならないのか。
自然に生きていくのに必要な分こっきりを捕食しているだけなら、放っておけば良いではないかと。