リッキーは軽く頷き、また首を振る。
「はっきり申し上げましょう。あの方は、まるでマグヌス殿の偽物です」
はっとしてサフィールはアレキサンドラ、リッキーの手をとり、その指に口づけた。
「おやめ下さい、サフィ……誰かに見られでもしたら変に思われてしまう」
「なぜ? 君だけだ。そう言ってくれたのは。私は間違ってはいなかったのだ。実はだれかそういってくれまいかと神に祈っていたのだ。だが、ただの一人も口にしなかった」
君にだけは話そう、と王子は口火を切った。
「これは居酒屋で旅人に聞いた話なのだが」
「その話、どれくらいの信憑性があるのですか?」
「気になるんだね? 確かな情報とはかぎらないのではないかと……私を嘗めるな」